大男は詰まりながら言った

私は北極へ向かう船の乗組員からこんな話を聞いた。

北の海で、手漕ぎボートで北極を目指す異形の大男と知り合い、そして毎日奇妙な話を聞いたという。

どこへ行っても同じさ。働かない偉いさんの食い扶持を新入社員+αが稼ぐのさ。

変動分は派遣社員の皮を被った偽装派遣の連中の担当だ。連中は略奪好きの傭兵よりもタチが悪い。

何も知らない新人を教育するのはそんな外注だ。転職もせずに居残りプロパー組の連中は新人を育てるつもりなんて毛頭ないからな。

なにしろ新人は1年で半分やめちまう。2,3年で芽が出てくれば、搾取の構造に気づいてどこかへ飛び出しちまう。それすら気付かない連中はただ漫然と目的のない作業を繰り返し続けるのさ・・・・

それでアンタは何者で、あすこへ何の用があるってんだ?

放浪の果てで、あすこのうわさを聞いた。俺たちと同じような連中の村があるらしい。俺はそこで俺たちの国を造ろうと思う。

どうせ俺たちはあんたたちからは邪魔者扱いされるだけだ。あんたは悪い人間ではなさそうだが。

俺たちは俺たちが何者かなんてわかるはずがない。あんたたちだってそうだろ?

アンタの話は半分、いや10分の1も理解できないが、アンタの言ったこと理解できる誰かに必ず伝えると約束するよ。