青い空をいっしょに眺める

あなたが見る青い空と私が見る青い空は同じものかもしれませんが、私に見えている空と、あなたに見えている空は違うかもしれません。

脳は優秀な物理-電気トランスデユーサを従えた情報処理装置です。

外界の物理現象は同じでも、電気信号の仕様は、いいかげんです。

なぜならば、外界の物理現象に対応する認識結果の対応付けが目的なのであって、電気信号の仕様はどうでもいいからです。

少し深く考えれば、電気信号の仕様は異なる物理現象に対して峻別可能な電気信号が割り当てられていれさえばよいことがわかるのです。

そうはいっても同種同属の個体間でそれほど仕様が異なることも少ないでしょう。臓器移植のときにも不便です。

 

さて、そんなことはどうでも良くて、本題です。

ほんのすこし未来の映像・音声圧縮について考えました。今は、視覚聴覚の外側の物理現象の再現性に躍起になっています。

限られた帯域を生かすための情報圧縮技術が花盛りです。

しかしすこし考えれば、ばかげていることが分かります。特定のパターンを目や耳から入力することで、ウルトラハイビジョン映像を再現する能力が脳には備わっているからです。

簡単に言えば連想能力です。ようするに、脳の一部と協働することで、ごくわずかな通信帯域でも、超高精細の映像や音声を脳内に再現することが容易なはずなのです。

それは文字で書かれた小説を読めばすぐに実感することができます。

「トンネルを抜けるとそこは雪国であった」

この数十バイトしかない文字列から、豊かな映像や音、そして寒々しい車内の様子まで感じることができるのです。それは数十メガバイトかそれ以上の情報量を持っているでしょう。これは脳の能力です。

しかし残念なことに、個体ごとの経験に左右されやすいものですので、再現性の点でハリウッド方面からクレームが付きそうです。

そうは言っても、映画MATRIXで暗示されているように、半角カナや記号が流れるだけの端末を眺めることで、仮想空間におけるすべての活動を読み取ることくらいのことは現在の人間の脳でも充分可能なはずです。

ちょっとした訓練と動機付けだけでも現在仕様の脳はもっと情報圧縮に協力することができます。未来の脳2.0は、信じられないくらいの情報圧縮に寄与することでしょう。ただし、それは選ばれた人々のみに許されることになります。そのための選別がまもなくはじまるのです。

 

9600bpsのシリアルコンソールに流れる意味不明な文字列を眺めるだけで、サーバーの調子を把握できるあなたにはその資格があるのかもしれません。