ドワーフの弟

ニンゲンは好きになれないんだよな。

ドワーフはニンゲンより寿命がちょっとばかり長いんだな。自慢できるほどじゃないけどな。

おれっちの兄貴がガキのころはそうでもなかったらしいが、おれっちが自分の家を建てた頃にはもうドワーフの里はすっかりニンゲンの村に飲み込まれちまってたな。

おれっちの兄貴は、まぁ格好よく言えばドワーフらしいドワーフだったな。腕っ節も強かったし、ドワーフにしては商売もできたほうだし、ただドワーフの古いウタ、おっれっちはあまりうまいと思ったことがなかったな。

ドワーフはニンゲンの言葉でいえばバカ正直なところがあって、おれっちの兄貴もよくニンゲンにだまされてたな。商売人とかヤクニンにコツコツ貯めた金を丸め込まれて持っていかれたりしてな。

その点おれっちなんかは良いのか悪いのかニンゲン風に染まっちまって、ニンゲンの悪いやつから巻き上げるようなこともしてるくらいだ。自慢するようなことじゃないけどな。

ニンゲンみたいに染まっちまってから兄貴のことをよく思い出すよ。いまだったら兄貴と面白おかしく暮らせそうな気がするんだな。でもよ、おれっちの兄貴は死んじまってもういねぇんだ。ハカのあるとこは知ってるけどな。

ニンゲンには寂しいって言葉があるンだってな。おれっちはドワーフだからそういうのはあんまりよくわからねぇけどな。

おれっちみたいな半端ものの周りに集まってくるようなニンゲンはちょっとやっぱり変わってるのが多いけどな。ひとりひとりはみんないいやつだ。

でもよニンゲン全部はやっぱり好きになれねぇんだよな。