どういう指示を出せばよいか分からないから。
ほとんどの場合、そういう状況でしょう。
経験2~3年で、後進を育成できるほどの優秀者はまれでしょうから。
かといって5年10年の経験者は、脳みその中身が陳腐化していて育成できませんね。もちろん経験の上澄みと言われる
ユニバーサルな問題解決能力
なる摩訶不思議な神通力を後進に伝える必要はあるでしょうが、それはおぼれかけている人にクルーザーの操縦を教えるようなもので順序がおかしいです。
さて先日、ほとんど素人の若者が炎上現場で放置され勝ちな問題について、ごみため的見解をお示ししたところ、トンチンカンな反応が見られましたので、おサンプルとしてお晒しておきます。
え~とそれは
本人の成長のためにあえて
放置している可能性を考慮した上での
懸念という理解で合ってますか?
クソ偽装常駐請負の現場で「本人の成長のため」だそうですよ。(笑
若手を育成したければ、リスクをとって社員を登用して仕事を取ってくれば良いわけです。まともな現場で仕事をしたことがない人種は、
客のカネで
客先・常駐先で
新人を育てる
のが当然だと理解しているようです。日本の多重偽装請負の弊害はその辺りにもありそうです。
仕事を遂行する能力のない人間を低い単金で押し売りして、
客の設備をタダで使って
職務経歴書を埋めるためだけにただ座らせておく
のが常套化し過ぎたのです。これが長いこと続いてきたので、職務経歴書は持っているはずのスキルとかけ離れています。そりゃもちろん経歴がその人のスキルを表現できるわけないですけどね。
「育成」されている側も、他人の経歴を見るときに、
「何が」できるかではなく、
「どこに」座ったことがあるか
にしか意味を見出しません。
犬の社会にたとえれば、
<従来>
見た目にかかわらず
ケツの匂いを嗅げば
およその戦闘力、社交性は分かる
だったのが、
<現在>
見た目は全部同じAIBOで
ケツからはいろんな会社のイスの匂いがするだけ
という状況に近づいているということです。
自称ベテランの方々が1週間ほど観察すればすぐにただの間抜けを見分けることが可能ですが、だからといって、
1フロアに100人も200人も間抜けがいる
のをどうやって解決できるでしょうか。
100人の間抜けの裏には50社のブローカがおり、25社の中抜き業者がおり、10社のSIerモドキがいるわけです。
少し前なら、
比較的まともなリーダー陣
どうにもならないボンクラーズ
という構図でしたが、最近は、
ボンクラーズが成り上がったボンクラリーダー陣
どうにもならないボンクラーズ
に遷移しつつあります。以前はボンクラには、どうでもよい重要でない仕事、たとえば書類整理とか掃除をやらせておいて、まともな人間だけで仕事をまわしていました。
# それを正社員で回せなくなったから派遣請負に頼るようになったはずなのですが(笑
ところが人口比でボンクラが増えすぎたために、できもしない仕事を担当したボンクラが自己炎上(self burningってカコイイな)して状況を悪化させ続ける事例がそこかしこで発生しているようです。
仕事が苦手な人には危ない仕事をさせない
これはIT業界に限らず、どこの会社でもやっていたことです。人間には向き不向きがあるのですから。
営業成績が悪い万年係長も宴会部長になれる
手書きの宛名書きなら総務のXXサン
ゴルフの接待なら日陰課長
社員旅行は代理店にコネのある窓際部長代理
そうやって人材を活用していたわけです。それを維持できなくなったのが問題なのです。
何度も主張させていただいておりますが、一般企業と違って
ボンクラの方が炎上しやすい
炎上したほうが残業代をたくさん請求できる(売り上げアップ)
炎上したほうが増員要請が来やすい(業績拡大)
というロジックが正当化されている業界は、救いようがありません。
「それが本当なら発注元の購買管理がバカなだけなんじゃないの?」という知的ぶった皆様には組織論についての無知を反省していただきたいですね。
購買部門の序列は
手配の額がナンボ(多いか少ないか)
で決まるからです。ある開発プロジェクトが炎上して2億3億垂れ流しても、涙目になるのは決済する担当役員だけです。購買部門は予算を執行する額が水ぶくれして、ふんぞりかえっていますね。
ほんまやったら増員XX名で50百万のことろ
ウチの力量で45百万円に抑えましたさかいに
さて炎上する現場で若者に成長を期待するトンチンカンな話に戻りましょう。
昔の製造現場でよくあった(という伝説が多く聞かれる)カリスマ経営者やカリスマ技術者の逸話を思い出してください。それはこんなものです。
例:
本田ソーイチロウ氏は気まぐれに開発現場に現れては
誤った設計を見つけると
「わしが聞いてる話と違うやないか!」と
貴重な試作機をハンマーで破壊してしまうことが何度もあった
あるいは、
例:
ジョブズ氏はプレゼン会場で
気に入らない飾り(あるときは生け花)を見つけると
担当者を呼びつけて
「この犬のウンコを今すぐ撤去しろ」とわめき散らした
通訳が婉曲的に説明しようとすると、
「イ・ヌ・ノ・ウ・ン・コとそのまま訳せ」と強要して通訳をダウンさせた
というようなものです。(一部脚色しています)
パワハラにも見えますが、放置するよりは100万倍マシです。
新人に自分で考えさせて
自分で行動させる
とかいう育成方針は「ゆとり教育」よりもタチの悪い阿呆のやることではないでしょうか。指摘すべき問題点が多すぎて何から書いてよいか分からないくらいです。
まず、ビジネスですから納期は守らないといけません。新人が運よく自律して行動できたとして、納期が守れますか。次に品質はどうですか。どうやって担保するんでしょうか。ぜんぶチェックしてあげるの?最後に決済権がない新人が最後まで遂行できるんでしょうか。
これらの点は、社員研修であれば問題になりません。把握可能な範囲で、つまり箱庭で考えさせるのはかまわないと思います。それでも制限時間の設定が必要ですね。
企業研修と実際の炎上現場で同じやり方は通用しないのはご同意いただけるかと思います。
パワハラ的やり方がどうしてマシなのかというと、
GOOD/BADの判定を
明確にしている
この点に尽きます。スキナー型条件付けであっても、教師信号がなければ学習のしようがありません。IT現場の仕事のために必要な能力が先天的・生得的な大脳の機能であれば、放置プレイでかまいませんがね。もしそうであっても天賦の才能をスキルに昇華させる必要があります。暴れ馬は足が速くてもそのままでは競走馬になれないのです。
何かを”学習”(←ガッコのおべんきょのことではありませんよ)させたいのであれば、教師信は必要です。
丸3日掛けて書いた図面を破り捨てられても、強烈なBAD信号としては優秀です。
「何がBADなのか」を一人で考え、調べさせることは構わない気がします。
その前段階の「何をすればよいか」を考えさせるのはただの阿呆だということです。それをあとから叱責しても、意味がないのを通り越した間抜けな状況であるとわからないでしょうか。
A:なんでこんなことやったの?
B:これをやるべきだと"思ったからです"
A:"思った"で済むなら仕事はラクだよな!! 馬鹿野郎
ただの雑用係として大成してほしいなら、矢継ぎ早に指示を出して頭を使わせてはいけません。そうではなく、
本人の将来のため
成長を期待して
あえて放置している
というのは指示できない自己無能に対するただの言い訳と考えます。
矢継ぎ早に指示を受けこなし、その意味を考え続ける方がよほど本人のためでしょう。ただし、成果に対するGOOD/BADの評価は的確にすべきだと思われます。
# 本人の生き残り本能でデタラメ・手抜きの仕事術を身に着けてほしいのなら話は別ですが
というようなことを打ち合わせ中に考えながら、帰り途に
こんなことクチに出したら
しばかれるか大絶賛されるかのどっちかやろな
と省みながらあるく秋の夜でした。
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いかにもスマートな「俺流★新人放置プレイ」の後で上司から、
お前が付いていてなんでこんな結果になったんだ!
何をやっとったんだ!
と叱責されてもなお、ごみための書いていることが理解できないあなたには、かなり見込みがないので今後部下を持たないことをお勧めします。
# BADシグナルを実体験してもまだ分からない?
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