1年後のことは分からないが、1msec未来なら分かる。
1msecとは1000分の1秒のことです。
1msec未来が分かるということは、1msec時間移動したのとほとんど同じです。問題は意識の入れ物は時間移動に対応できないので、時間移動ができたことにはなりません。
観測者にとっては時間移動は成功ということになります。
1msecの時間移動は現代制御理論の隆盛とともに頻繁におこなわれるようになりました。古典的なフィードバックに加えてフィードフォワードやモデルを用いた制御理論です。モデルという仮想世界(状態空間という名の魔法)を制御装置に組み込んでおけば、1msecくらい未来のシステムの挙動を”ある範囲で”予測可能となります。その範囲内で安定に制御できればあとは操作可能な余裕があるかどうかです。
実際の制御では操作量を実現するデバイスと膨大な計算量を短い時間で完了する計算機の進化が背景としてあります。どちらもハンドータイですな。
いっぽう、1msecの時間移動を利用する計算機を用いれば、各種市場から広く薄く小銭を稼ぐことが可能です。それをたくさん繰り返してまとまった利益を得るためには、短い時間にたくさんの取引をおこなう必要があります。
東証には、tickが1秒以上という最強かつ最凶のプロテクトがあったのに、今年から解除されました。GW前後には、欧州企業が予行演習をいろいろおこなってその実被害が出ていたのも記憶に新しいところです。
# 金融関係にはテスト用環境を立てないという慣行があるんでしょうか。
# 実際の状況を再現できる環境なんて用意できるわけがない、とかいってバグだらけのシステムの接続を許容している時点でクソ認定していい気がしますけど。
1msec未来からの富の収奪は金利と同じく、手法は古くからあるものです。ただ、人手があまりかからなくなったというだけのことです。
金利というものが悪魔のツールであることは、数千年前から知られていることです。未来に生み出される富を吸い出す装置だからです。未来では富がスカスカの世界が待っています。なのでさらに未来から金利というツールで富を搾り出し、かつ金利の金利や、金利の金利の金利を用いて未来から富を吸い出し続けるのです。
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さて、制御屋は、1msec未来が分かれば充分だと考えています。より複雑で精緻なモデルといっても、1msec未来を正確に知ることにしか興味がありません。
市場を予測する一部の人々は数ヶ月や数週間の予測から1日単位、時間単位の予測へとどんどん短期へ流れていって、1msec未来の手法を流用しているだけにすぎません。
明日のことや、来月のこと、来年のことを知ることができれば、もっと富を得られるのです。それはセコイ金利どころの話ではありません。
制御屋さんは言います。
積分要素があるかぎり、長期間の予想は初期値問題に帰着する。
だから1msec以上未来を予測しても意味が無いのさ。
古典制御で言われたことです。PIのIを大きくしすぎると、応答が遅くなってしまう。
昔ある誇大妄想家は、未来を予測する代わりに未来を変えてしまえというようなことを言っていましたが、制御屋さんは自分が未来を変えていることにあまり気づいていません。
1msec未来を予測してシステムを制御するということは、
制御しなければひっくりかえる倒立振り子を
制御することによって立ったままにする。
(倒れるはずだった振り子)
ということです。フィードバック制御は過去の情報から望む未来を切望していただけ(お願い!発散しないで!ここで止まって!)なのに、現代理論では未来を変えてしまっています。
ある程度閉じたシステムでうまいモデルが構築できれば、制御によって短い時間なら制御/操縦できるということはすでに実証されていますね。
問題はここから先なのです。現代制御理論では、発散振動の判定が難しい。みんながその制御を使い始めると、その危険はより高まります。
いままでのような
負帰還が強すぎて発振気味の不安定
というのとは次元の異なる不安定さが増すのです。不安定性が増すということは挙動の次元が文字通り上がります。すると制御も難しくなるわけです。
これからかなり長い間、この不安定性への可能な対応はサーキットプロテクタやサーキットブレーカー的なものしかありません。バチ切りするしか停められないシステムですな。
これは蒸気機関時代のボイラー爆発の恐怖と安全弁の世界への逆戻りを示唆しているような気がします。懐かしいですな。
このように未来予測モデルへの信任としての富が生み出され続けます。
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